EU データ法(Data Act)はクラウドの価格設定に明確な期日を設けました。2027 年 1 月 12 日以降、事業者は顧客が他社へ移行する際の乗り換え手数料を一切請求できなくなります。そこにはデータのエグレス(持ち出し)料金が明示的に含まれます。上限ではなく、ゼロです。
経過措置はすでに 2 年半が過ぎている
規則は段階的に適用されてきました。2024 年 1 月 11 日から 2027 年 1 月 12 日までは乗り換え手数料の請求が可能ですが、移行支援のために事業者が実際に負担した直接費用の範囲内に限られます。つまり、エグレスを利益源として扱う価格設定は最初の期日の時点ですでに適合しなくなっていました。2027 年 1 月 12 日以降は、その費用の転嫁すら禁止されます。
適用範囲もはっきりさせておきましょう。拘束されるのはEU の顧客にサービスを提供する事業者であり、EU に本社を置くベンダーだけではありません。逆に、あなたも顧客も EU 域外であれば、この規則が自動的に同じ権利を与えてくれるわけではありません。とはいえ、グローバルなベンダーが同一製品で大きく異なるエグレス価格を維持し続けることは稀で、市場価格は収斂しがちです。手元の法的武器ではなく、方向性の指標として読むのが妥当です。
ロックインの正体は月額料金ではない
選定時は誰もが月額を比べますが、実際に移行を妨げるのはたいてい別の 3 つです。
- GB 単位のエグレス課金:データは置いておく分には安く、動かすと高い。「いつでも出ていける、ただし出ていくには支払いが必要」という構造です。
- 一社にしかないマネージドサービス:ホスト型データベース、キュー、認証、関数ランタイム。統合が深いほど、移行時に書き直すコードが増えます。
- 文書化されていない依存:アプリに直書きされた内部エンドポイント、コンソールでクリックしただけの設定、誰も書き残していない IAM ポリシー。請求書には現れませんが、移行期間の大半を占めます。
今日できる 3 つのこと
- 一度、自分の退出費用を計算する:オブジェクトストレージ、データベース、バックアップの総量を合計し、現在の事業者の GB あたりエグレス単価を掛け、環境再構築の人日を足します。それが今の「出ていく価格」で、初めて計算したチームはたいてい驚きます。
- バックアップを別ベンダーに置く:移行できることの最も簡単な証明は、別の事業者のところに復元可能な完全バックアップがあることです。移行訓練と単一事業者障害の両方に同時に答えられます。
- 依存関係図を描く:DNS、CDN、証明書発行、オブジェクトストレージ、メール、決済——第三者ごとに「置き換えにどれだけかかるか」を書き添えます。1 週間を超える項目が、あなたの実際のロックイン地点です。
固定帯域枠がこの点で単純な理由
従来型の VPS の課金は従量制エグレスと構造的に異なります。帯域枠がプランに含まれているため、データを外へ運び出しても別項目の請求が発生しません。これは VPS がパブリッククラウドより「優れている」という話ではなく、解く問題が違うだけです。ただし懸念が「将来出ていくときに請求書に足を取られないか」であれば、固定枠はその費用を初日から予測可能にします。SharkCloud は各プランのリソース仕様と帯域枠をプランページに明記しており、日本・シンガポール・香港・米国のノードにそのままデプロイできます。移入も移出も、価格交渉から始める必要はありません。